多くの人のもとに届いてほしいこのナンバーによせて、著作「ミスター・アウトサイドわたしがロックをえがく時」(大栄出版)をはじめ、彼のインタビューを手がけてきた音楽ライター・長谷川博一氏に忌野清志郎というアーティストへの思いを寄せていただきました。フォトギャラリーでは、2008年2月の日本武道館での“完全復活祭”とBlue Note TOKYOでのライブの写真を公開。新曲の動画と合わせて、そのアーティストとしての魅力、楽曲の魅力をあらためて感じてください。
久々のラジオソング『Oh! RADIO』
6月17日リリースの新しいシングル『Oh! RADIO』を聴いた。『スローバラード』にもカーラジオが登場していたし、『トランジスタ・ラジオ』(1980年。『EPLP』収録)という代表曲もあるし、久々のラジオソングである。すべての楽器を自分で弾いている。大切な音楽はラジオで知るのが一番幸せ。そういう今も昔も変らない“基本”を、ここでまたかみしめる。
闘病の厳しさや苦しみが順々に詳しく報道されたわけではないから、清志郎さんはこの世の人から突然星になってしまったという印象がある。5月の青山葬儀所。ぼくも午後の時間にお別れのあいさつをさせてもらいに行った。特設ステージには愛用のギターが並べられ、スピーカーからはRCサクセションの『空がまた暗くなる』が流れていた。
「♪おとなだろ 勇気を出せよ 誰にも言えないことばかりじゃ 空がまた暗くなる♪」
大人の気分で描かれたRCの隠れた名曲(1990年)。ぼくも大勢のファンも十分に悲しい気持ちでいるのに、歌が流れる間だけは逆に励まされているような気にもなった。ああ、スターの仕事ぶりとはそういうものかもしれない、とも思った。なればこそのスターであり星なのだろう、と。